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Author:チェリーク
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ー第4話「決心」ー

ー謎の空間ー
 そこは不思議な場所だった。
 辺り一面が真っ暗な中に、光の紋章みたいなものが浮かんでいる光景だ。
 紋章の端は、それぞれ『赤色』と『青色』に光っている。
 自分がその紋章の中心に立っていることに、竜義は気づいた。
 竜義「(何だこの場所は。俺は確か、ラビダンジョンの入り口付近で魔族と戦っていたはずだ。)」
 そう、あの「アルファルク」という男と戦っている最中だったのだ。
 その時たしかチェリークが危ないと分かって、助けに行こうとして・・・そこで記憶が途切れている。
 もしかして、死んでしまったのであろうか・・・。
 ???「気がついたか、竜義。」
 竜義「・・・誰だ!」
 突然声が聞こえたものだから、竜義は驚いて顔を上げた。
 すると目の前に、闇の中から人が現れるのが見えた。
 いや、その人物を『人』と言って良いのか分からない。
 現れたのは、光り輝く鎧を身に纏った騎士だった。その者(おそらく男性であろう)の背には、黒く大きな翼が生えている。
 ただの騎士ではないことは誰にでも分かるだろう。
 その姿にはどこか威厳があり、そして勇ましかった。
 まるで、『光』を象徴するかのようだ。黒い翼があるのに・・・だ。
 ???「何だ、我の名前を忘れたか・・・。まあ良い、
 我が名は『アーリアル』。かつて、お前と『運命を共にした』者だ。」
 竜義「『アーリアル』・・・。不思議な響きだ・・・。」
 何故だろう。この「アーリアル」と名乗る人物・・・敵だとは思えない。
 懐かしい・・・と言う感じではないのだが。
                  mabinogi_2009_01_31_019.jpg
 竜義「ところでアーリアル、ここは一体どこなんだ?」
 アーリアル「・・・ここは『生と死の狭間』・・・。
 我の背後にある赤い光は、あの世・・・『ティルナノイへの出入り口』。
 そしてお前の背後にある青い光が、『エリンへの出入り口』となっている。」
 どうやら死に至ることはなかったようだ。
 安心するべきなのだろうが、アーリアルの事が気になる。
 『運命を共にした』の意味を尋ねようとしたとき、アーリアルの方が先に口を開いた。
 アーリアル「先ほどの戦い、見させてもらった。」
 アーリアルは小さくため息をついた。
 確実に何かに呆れていることがはっきりと分かる。
 アーリアル「・・・情けないな。それでもおまえは救世主か?」
 圧倒的な強さを感じる声が、闇の遠くへ響く。
 その声は決して、闇に溶けることはない。
 アーリアル「竜義、その剣を見ろ。それを手に入れたとき、お前は何を誓った?」
 竜義「言いたい放題言ってくれるな・・・。」
 アーリアルを睨み上げ、すぐに目を逸らした。
 竜義「記憶を失い、戦い方も分からないと言うのにどうやって勝てと言うんだ・・・。」
 明らかに戦いに慣れている魔族が相手だったのだ。
 同じ立場なら、誰でもそう言いたくなるに違いない。
 アーリアル「そうか・・・。お前の心は、そんなに弱くなってしまったのか。
 やはり、我らの期待はずれだったというのか・・・。」
 威厳のあるアーリアルの声に、無念の色が混じる。
 アーリアル「・・・それでも、もう運命の歯車は回りだしているのだ。
 止めることなどできぬ。
 しかし・・・だ。記憶は無くとも、お前の中には強力な『力』がある。
 自信を持て、竜義。お前が勝てない相手など居ない。
 おまえは一人ではないのだ。我も遠くから見守っている。
 自分だけが苦痛だと感じるな。『真実』を知る者は、不安と恐怖に怯えながら自ら戦いを選んだのだぞ。
 ・・・信じるのだ、己の武器と仲間を。
 仲間と互いに支え合い、共に苦痛を乗り越えることが出来たとき、
 それぞれが『本来の力』に目覚めるであろう。・・・ん?」
 アーリアルが話を終えたとき、彼の体は薄くなっているように見えた。
 アーリアル「そろそろ、時間切れか・・・。我がここに居られる時間も、あとわずかだ。
 さあ、どうする。『長き戦い』に疲れ、これ以上耐え切れないとでも言うのであれば、あの世への門をくぐるが良い。
 それとも、恐怖に立ち向かって己の使命を果たすことを望むのなら、さっさと生の現実世界、エリンへ戻るのだ。お前の帰りを『待っている』者が居る。」
 竜義「・・・・・・・・。」
 自分の帰りを待っていてくれる人が居るとしたら、その人物は思い当たる限り一人しか居ない。
 竜義「俺は自分の記憶を見つけられないまま、死ねない。」
 きっとあの世への入り口を通ってしまったら、絶対に後悔する・・・。そう思った。
 竜義「己の使命とやらを果たしに行ってやる。」
 挑むかのように、目の前に居るアーリアルを見上げる。
 迷いなど、既に無かった。
 竜義「(それに、このまま死んだらあいつに怒鳴られそうな気がするしな。)」
 アーリアル「・・・『救世主』。それは、『女神』と我等が勝手に決めた呼び名・・・。
 おそらく魔族は、我らを馬鹿にして笑っているだろうな。
 しかし我は信じている。必ずお前達が、エリンに平和の光を差し込むと・・・。
 最後に教えてやろう。覚えていないだろうが、汝ははその剣に『いつか出会った仲間を守る。』と誓ったのだ。」
 竜義「仲間を、守る・・・?」
 仲間とは、チェリークやこれから出会うであろう他の救世主達か・・・?
 そのとき、
 竜義「・・・っ!」
 突然激しい頭痛が竜義を襲った。これは、一体何を意味しているのだろうか。
 理由は分からない。だが、心の中の自分が何かを拒み、悲鳴を上げているような気がした。
 アーリアル「焦るな。どんなことがあろうとも、必ず『真実』を知るときが来る。
 ・・・楽しみだ。『真実を』知ったとき、お前はそれをどう受け止めるのだろうな・・・。」
 だんだんとアーリアルの姿が薄く、透明になっていく。
 アーリアル「己の心が分からなくなったときは、常に武器に問いかけろ。その剣は、お前の心を正直に受け止めてくれる。忘れるでないぞ。
 それと、この姿は我のものではない。ここに長く居られないのもその影響だ。本当の姿の我に会いたいのであれば、『アル』を訪ねるが良い。ではまた会おう、竜義。」
 そしてアーリアルは、跡形も無く消えた。
 本当は色々なことを聞きたかったが、仕方が無い。
 後ろを振り返ると、青い光が上に伸びている。
 竜義はその先がエリンであることを信じ、青い光の元へ歩き、入り口に足を踏み入れた・・・。
 
 
 
 チェリーク「あ・・・。竜義さん、意識が戻られて良かったです・・・・大丈夫ですか?」
 目を開けると、チェリークとビオが竜義を見ていた。
 空は暗く、無数の星が輝いている。真夜中なのだろう。
 パチパチと何かが燃えている音が聞こえる。
 顔を少し横に向けると、焚き火が暗闇の中を照らしていた。
 近くに敵は居ないらしく、安心感が竜義の心を包んだ。
 竜義「あ、あぁ大丈夫だ・・・。」
 竜義は横になっていた体を起こした。手首を見ると、傷はすっかり消えていた。
 脇腹にも、もう痛みは感じない。チェリークが全て治してくれたのだろうか。
 竜義「それよりも、お前は大丈夫なのか?」
 チェリークがエアウォークに斬られたときの傷は、治っているのか見当たらなかった。
 しかし彼女は全体的に火傷を負っているままだった。
 特に左腕が悲惨で、傷の深さを物語っている。
 チェリーク「大丈夫です。それよりも、竜義さんがずっと唸っていらしたので心配でした。」
 ビオ「ったく、数時間前まで本気で焦ってたんだからね〜!」
 ようやく先ほどの出来事が夢であったことを理解した。
 ・・・夢だとは思えなかった。すべて、はっきりと覚えているからだ。
 傍で燃え盛る炎を見つめながら、アーリアルと話したことをゆっくりと思い返す。
 アーリアルに言われたこと一つ一つが、心に強く刻まれていた。
 竜義「(仲間を守る・・・か。今回は守られてしまったが、次は大丈夫だろう・・・。)」
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 こんにちは、お久しぶりです。
 まずはお詫びを申し上げます。更新が遅れて本当にすみませんでしたorz×100
 いざ書こうとした時に限って期末テストと重なってしまったものでして、本日ようやく4話を公開することが出来ました。
 決して話に詰まったわけではないですので、そこはご理解をお願い致します><
 今度は途切れすぎないように出来る限り努力します!(テスト期間中はご勘弁を;;)
 では、また次の記事で^^
ーラビダンジョン入り口前・夜明けー
 一方、竜義は一歩も動かないでアルファルクと睨み合っていた。
 相手が怖いからだという簡単な理由ではない。
 ちょっと動いただけでも、ほんの少しの隙を突かれるような気がしたからだ。
 それほどアルファルクから感じる威圧感は、強い。
 アルファルク「どうした、いつまでもこのままでいる気か?」
 アルファルクは竜義と戦うことを楽しみにしているようだ。
 竜義「あいにく、そのような下手な挑発にのるタイプでは無いんでな。」
 とは言っても、止まり続けているわけにはいかない。
 こうしている間にもチェリークはもう一人の魔族、エアウォークと戦っているのだ。
 しかも日は出ていないが、いつの間にか夜が明け始めている。
 部外者が来る前に早く終わらせたいところだ。
 竜義は深呼吸をして、息を整える。
 それを見てアルファルクは竜義に向かって横から剣を振った。
 竜義は後方に跳躍して攻撃を避けたあと、一気にアルファルクとの距離を縮めた。
 剣を振りかざし、アルファルクに斬りかかろうとするが、あと少しのところでよけられてしまった。
 一瞬のことだったので動作が止まらず、竜義の剣は勢いよく地面に振り下ろされた。
 余程の力だったのか、地面の土が砂埃となって彼らの周囲を立ち込める。
 視界が閉ざされたのはたったの数秒だ。
 だがそれは、相手に一回でも攻撃できる絶好のチャンスでもあった。
 アルファルク「隙あり!」
 嬉々とした声と共に背後から剣が突き出される。
 竜義はそれを自分の剣でなんとか受け止めた。
 あまりにも強い力で押されて、竜義の足が少し後ろにずれる。
 その状態が長い間続いた。気がつけばすでに辺りが明るくなっている。
 視界には、チェリークがアイスボルトを放っている姿が見えた。
 竜義「(何だ、あの氷の塊は!?)」
 まだ魔法が使えない竜義にとっては、初めて見るものだった。
 竜義「(この戦いが終わった後、詳しく聞いてみるか・・・。)」
 アルファルク「余所見をしている暇は無いぞ。」
 アルファルクは剣を竜義から離すと、剣を水平ににしてそれを回転させるように振る。
 接近攻撃系スキルの一つ、「ウィンドミル」スキルを発動させたようだ。
 スキル準備が速かったとはいえ、竜義にはディフェンススキルを発動させる時間は十分にあった。
 これでアルファルクの剣を止められるはずだった。
 しかし彼の剣が竜義の剣に届く前に、『強い衝撃』が少年を襲った。
 その衝撃は竜義の手元に当たった。
                    mabinogi_2009_01_01_040.jpg
 竜義「!?」
 突然手首に軽い痛みを感じた。手首からは、一筋の血が流れている。
 手元に気をとられていた竜義は、アルファルクの剣を横から受けてしまった。
 幸い重鎧を着ていたお蔭で打撲のみで済んだが、痛みが強いことに変わりは無い。
 思わずよろめく。
 そのとき、チェリークの悲鳴のような声と剣が落ちる音が聞こえた。
 視界の隅から、チェリークがエアウォークのファイアボルトを受けて倒れるところが見えた。
 竜義「・・・・・チェリーク!」
 反射的にチェリークを助けに行こうとして、目の前の敵を見ずに動いたのが少年の大きな失態だった。
 右の脇腹に激痛が走る。
 地面に『大量の血』が流れ落ちる。
 突然眩暈がして、視界が暗くなる。
 何が何だか分からないまま、竜義は意識を失ってしまった。
 アルファルクは少年の脇腹から『血のついた剣』を抜く。
 そのまま竜義の体が倒れるが、そのまま動くことは無かった。
 

 エアウォーク「どうする?とどめを刺すか、このまま連れて行くか・・・。」
 倒れている二人の戦士を見ながら、エアウォークは相方に問う。
 アルファルク「殺す。」
 アルファルクは大量の血を流して倒れている少年を見て言った。
 エアウォーク「そう、分かったわ。」
 そう言ってチェリークの方を見ると、少女は彼らを鋭い視線で見つめていた。
 動けるはずがない。なのにチェリークの目から、竜義には絶対に触れさせないという意志がはっきりと感じられた。
 エアウォーク「諦めなさい。もうあんたでは守れないわよ。」
 嘲け笑っているエアウォークの後ろでアルファルクは竜義に手を伸ばしかけた。
 ところがアルファルクの手が触れる前に、突然竜義の体から微量の『光』が発生していた。
 エアウォーク「な、何・・・?」
 驚くエアウォークに向かって、アルファルクは呟いた。
 アルファルク「まずいな・・・。『覚醒』の予感がする。」
 何かしらの危険を感じたのか、アルファルクはすぐさま竜義から離れた。
 エアウォーク「まさか・・・!目覚めたばかりだと言うのに、ありえないわ・・・。」
 アルファルク「可能性はある。」
 彼には確信があるようだった。
 エアウォーク「でもあれは、『女神の祝福』が必要なはず。まだあの子には無理じゃない?」
 アルファルクは首を横に振った。
 アルファルク「あの娘が怪しい・・・。もしかしたら、あいつが出来るのかもしれない。」
 チェリークを見た限り、ただの普通の少女にしかエアウォークは見えなかった。
 だが、もし本当にそうだとしたら・・・。
 エアウォーク「なるほど〜。油断は禁物ってことかしら?」
 アルファルク「そうだ。そろそろ人間共が来るかもしれないし、ここは撤退だな。」
 エアウォークは頷いてから何かの魔法を唱えた。
 アルファルク「運が良かったな、救世主。」
 詠唱が終わると魔族の二人の姿は、まるで霧が拡散したかのように・・・消えた。
 未だ意識が残っていたチェリークはなんとか立ち上がり、ビオの元に歩く。
 チェリーク「ビオ・・・返事は、出来る?」
 ビオ「う、うん・・・。でも、私のことより・・・竜義を・・・。」
 ビオも空中に浮かぶことは出来たが、よろよろとしている。
 チェリーク「竜義さん・・・!」
 今度はふらつきながらも、チェリークは竜義の元に駆け寄った。
 ビオ「やっばいよ〜、早く治療しないと・・・。」
 チェリークは回復魔法「ヒーリング」を唱えた。
 少女の周りに、温かい光の球体が5つ浮かぶ。
 その光を竜義に全てかけるが・・・、
 チェリーク「嘘・・・。」
 なんと、瀕死状態である竜義の深い傷がほとんど癒えてないのだ。
 ビオ「チェリークのヒーリングの回復力は、強大なのに・・・。」
 実はチェリークは全体的な力は救世主達よりも劣るが、回復の力だけは一番高いのだ。
 チェリーク「もしかして、力が足りないから・・・?」
 よく見るとチェリークも相当の傷を負っていた。いつも通りの力が出せなくて当然だ。
 ビオ「ごめん、チェリーク・・・。我も、『力を貸したい』けど・・・。」
 そしてビオも見た目では良く分からないが、かなり体力を消耗している。
 チェリーク「そんな・・・。」
 チェリークはその場に膝をつく。
 彼女を知る者なら、とても信じられない光景だろう。
 チェリークの瞳から、いく筋もの涙が流れていたのだ。
 チェリーク「どうして、私はいつも・・・・何も出来ないの・・・?
 もう二度と、誰も・・・『私のせいで傷つける』ことはしないと誓ったのに・・・。
 これでは、他の救世主も守れない・・・・。あの人達だって、守りたいのに・・・。
 もっと、私の力が強ければ・・・・こんなことにはならなかった・・・・・・。
 どうして、どうして私だけ『不十分な力』しか無いの・・・?
 こんなの・・・ないです・・・・・。」
 チェリークは、ただ己の無欲さに泣いた。
 ビオ「チェリーク・・・。」
 ビオの言葉に少女は答えない。
 チェリークは竜義を抱き起こし、再びヒーリング魔法を詠唱し始めた。
 チェリーク「せめて、傷口を塞ぐことくらいは・・・。」
 何度も光の球体を出現させ、竜義にひたすらかけ続ける。
 辺りには、一人の少女がヒーリングを唱える音だけが響いていた・・・。
ーラビダンジョン入り口前ー
 竜義「気をつけろ、チェリーク。やつらから、すごい『殺気』がでている・・・。」
 目を細めて警戒している竜義の視線の先に居る黒服の男女。
 女性のほうは真っ黒いスリムなローブを着ていたが、彼女が着ると何故かおぞましく見える。
 男性のほうは魔導師が着るようなスーツを着ていた。色は漆黒で、今にも暗闇に溶け込んでしまいそうなほど、黒い。
 そのうち女性の方が口を開いた。
 ???「まさか、もう封印を解いていたとはびっくりしたわ。『あいつ』を倒すなんて、少々油断しちゃったようね。」
 女性は余裕の笑みでこちらを見ていた。
 ???「まったく、『あいつ』では弱すぎたか。使えない奴だ・・・。」
 吐き捨てるように発言したのは、男性のほうである。
 チェリーク「あなた方は・・・!」
 チェリークは彼らが何者なのかを理解したようだ。
 少女の問いに答えるのは女性だ。
 ???「そう、あたし達は『魔族』。そしてあたしの名は『エアウォーク』。こっちは『アルファルク』よ。よろしくね〜、『救世主』。」
 「エアウォーク」と名乗る女性はくすりと笑う。
 アルファルク「『導き者』、折角『救世主』様を目覚めさせたところ悪いが、俺達に会ったことを後悔するのだな。」
 チェリーク「っ・・・・・。」
 チェリークは馬鹿にしたような口調で話す魔族達の前で、悔しそうに唇を噛む。
 竜義「(しかし、何なんだあいつは。)」
 竜義は「アルファルク」という名の魔族を見て違和感を感じた。
 よく見てみると、アルファルクは竜義と瓜二つと言ってもいいほど『似ていた』。
 そして服装は全く違うが、髪の色と目の色は竜義と対極していた。
 まるで、竜義自身を反対にしたかのように・・・。
 しかも、
 竜義「(外見が似ているだけじゃないような気がする。・・・それとも、俺の気のせいか?)」
 ビオ「・・・むむ!!ちょっと竜義とやら、いつの間にそんな姿になったのだ〜!?」
 ビオはアルファルクを見て動揺していた。
 竜義「寝言は寝てから言え。」
 ビオ「え、ええ!?こっちにも竜義が・・・って、それじゃああっちに居るのは何やつ!?」
 ビオの疑問に魔族は答える気はないようだ。
 エアウォーク「さて、自己紹介は終わりよ。大人しく死ぬがいいわ。」
 エアウォークとアルファルクは、それぞれの武器を構えた。
 竜義「チェリーク、あの女の魔族の相手を頼む。」
 チェリーク「え?」
 竜義「俺の武器では相性が悪いのもあるが、何より・・・。」
 何かを確認するように竜義は魔族達を見る。
 竜義「気づいているだろうがあの2人、俺達の武器と同じだけじゃなく色がまったく正反対だっていうところもある。」
 チェリーク「!」
 そうなのだ。
 なんと、アルファルクが構えている両手剣は竜義の持つ青い剣と反対色の赤い剣だったのだ。
 一方エアウォークが二刀流にしている剣は、チェリークの使用している水色の剣と反対のオレンジ色だ。
 戦いが避けられないことを竜義とチェリークは悟った。
 チェリーク「すみません、本当は後に『救世主だけが持つ力』を教えるつもりだったのですが、今はそれどころではないようです。でもある程度なら戦い方は自然に分かると思いますので、どうか耐えてください・・・!」
 チェリークは本当に申し訳ないような様子で言った。
 竜義「少々不安だが何とかなるだろう。お前も倒されるなよ。」
 チェリーク「はい。」
 ビオ「よしチェリーク、私もたたk・・・きゃあ!!」
 ビオに向かって炎の塊が飛んできた。
 どうやら魔族がファイアボルトを放ってきたようだ。
 チェリーク「ビオ!?」
 チェリークは倒れるように地面に落ちたビオに駆け寄る。
 チェリーク「ビオ、大丈夫?」
 ビオ「う・・う・・・・。」
 ビオは相当強い攻撃を受けたのか、返事が出来ずに唸っていた。
 エアウォーク「あら残念ね。『弱いまま』で戦かわなくてはならないみたいよ?」
 ファイアボルトを放った張本人が言った。
 竜義は疑問に思った。
 何故ビオが倒れるとチェリークが『弱い』のであろうか、と。
 チェリークはエアウォークを睨んだ。
 チェリーク「何もかも、ご存知のようですね。」
 エアウォーク「ええ、もちろんよ。」
 ビオを守るような位置で、チェリークは立ち上がった。
 チェリーク「ですが、ここで死ぬわけにはいかないのです。」
 そう言うと、チェリークは二本の剣を腰から抜いて構える。
 アルファルク「宴の始まりだな。」
 さも楽しそうに言うアルファルクは竜義を見ている。
 竜義「っち、戦うしかないか。」
 竜義も背中から両手剣を抜いて構えた。
 それを確認したかのように、エアウォークは自分の相手に向かって突進してきた。
 その速さは人間以上だ。
 チェリークは咄嗟にカウンタースキルを準備する。
 しかし間に合わないと判断し、スキルをキャンセルして横に跳んだ。
 その直後にエアウォークが横切る。ぎりぎり攻撃を避けられた。
 エアウォーク「ふ〜ん、どうやら技術はあるようね。でも、それだけだわ。マナの力の気配も人間並みだし。そんな『弱い』力で私に勝てるのかしら〜。」
 エアウォークに危機感は全くない。
 つまり、舐められているのだ。
 チェリーク「油断していると痛い目にあいますよ。」
 チェリークも人間以上の速さでエアウォークに向かって斬りかかる。
 相手のスキル準備も間に合わないかと思われたが、
 エアウォーク「おっと、危ない。」
 エアウォークが正面に構えた剣が火花を散らす。
                    mabinogi_2009_01_01_010.jpg
 剣が彼女の体に触れる前に、動きが止められていた。
 チェリーク「!!」
 どうやらいつの間にか防御系スキル「ディフェンス」スキルを発動されていたらしい。
 チェリークは一旦後ろに下がり、もう一度剣を振る。
 今度はエアウォークもディフェンススキルを使わずに剣でそのまま攻撃を受け止めていた。
 チェリークはまた剣を振り直し、それをエアウォークが同じように受け止める。その繰り返しだ。
 しばらくの間それを続けていたが、
 チェリーク「それならば・・・。」
 さすがにチェリークにとっては、同じことを継続させているのがきつくなってきたのだろうか。
 チェリークは後方に跳んで魔法を詠唱する。
 少女の周囲に氷の欠片が出現する。
 アイスボルトを詠唱したようだが、普通の人間なら一度では氷は一つしか作れないはずだ。
 ところがチェリークは一回の詠唱で五つもの氷をの欠片を作っていた。
 チェリークはその五つの氷を弾丸として相手に放つ。
 エアウォークは踊るようにその場を離れる。
 直撃は避けたも同然だったが、
 エアウォーク「痛っ・・・!」
 放たれた氷の弾丸のうちの一つがエアウォークの肩に少し当たったようだ。
 少量の血が黒い布から染み出る。
 エアウォーク「やってくれたわね・・・。」
 チェリークはもう一度魔法を詠唱して攻撃しようとしていた。
 エアウォーク「遊びは終わりよ・・・小娘!!」
 エアウォークは氷の弾丸が放たれる前ににチェリークの真正面に滑り込む。
 そして少女の体を両手に持つ二つの剣で斬りつけた。
 チェリーク「あぁっ・・・!」
 二本の水色の剣が音を立てて落ちる。
 チェリークの体が前に傾いたことによって、隙が作られてしまった。
 その瞬間をエアウォークは見逃さない。
 魔法を詠唱して作り上げた『巨大な炎』を少女に叩きつけるように放つ。
 チェリークはそれを受けたと同時に後ろにはね飛ばされ、その場に倒れこんでしまった。意識はあるようだが、しばらくは動けないであろう。
 エアウォーク「ほんの少しとはいえ、この私を傷をつけることが出来るなんて・・・。」
                   此処は・・・・どこだ?

                  目の前のあの子は誰だ?

         なんとなく懐かしい気がするが・・・ダメだ、思い出せない・・・

 少年は明らかに混乱していた。
 今、自分が居る場所すら分からないのだ。
 そこは全体的に明るい所で、少年は上から光が差し込んでいる吹き抜けのような空間の中心に立っていた。
 そこに居たのは少年だけではない。
 彼を少し離れたところで見ている者が居た。
 少女だ。
 青みがかかった黒髪に、青い瞳。
 そしてその顔には表情が無かった。何か話しかけたくても話しかけずらい雰囲気だ。
 少女を見つめ返す少年の瞳も青だった。
 とはいえ、二人とも全く同じ瞳かというと、それは間違いだ。
 少女の瞳は深いのに対して、少年の瞳は澄み切っている。しかも、芯がしっかりしているように見える。
 さて、どうしようかと思っていると、少女の方がこちらに歩いてきた。
 少女「気分は、いかがですか?」
 無表情ではあるが、彼女には少年を気遣っている様子がある。
 少年「最悪だな。」
 いきなり話しかけられて少し戸惑ったが、とりあえず正直なことを言った。
 よく分からないが、長い間狭い空間に無理やり押し込められ続けたようなかんじがするのだ。
 少女「そうですか・・・。」
 少年「あんた・・・誰だ?」
 少女「え〜と・・・。」
 ???「良かった〜、『封印』が無事に解けたようね。」
 どうやら他にも人が居たようだ。声の聞こえた方を見る。
 しかし、声の主は人間ではなかった。
 美しい緑色の光の球体に、羽根が4枚あるだけの生き物がそこに居た。
 少年「スプライト・・・!貴様ら・・・魔族か。」
 そう、その生き物は「スプライト」と呼ばれていて、魔族の味方をして人間達を襲っているモンスターのうちの一種だ。話せるスプライトを見たのは初めてだが、どうやらモンスターに関する知識は残っているようだ。
 ならば、そのスプライトの近くに居る少女は魔族に違いない。
 少年は背中に差してある両手剣に手を触れる。
 そういえばこの剣は変わった形をしているが、何処で手に入れたのかということも忘れていることに気づく。
 とにかく、いざとなったら戦うつもりでいた。
 ???「き、貴様とは何よ〜!!」
 ところがそのスプライトに敵意は無いようだ。・・・怒ってはいるが。
 少女「ビオ、落ち着いて。私が話すから・・・。」
 少女はスプライトに向かって言った。
 ???「うう、分かったよ〜・・・。」
 ということはこのスプライトには名前があり、その名前が「ビオ」なのだろうか・・・。
 少女「申し送れましたが、私の名前は『チェリーク』です。そして・・・」
 ???「我は『ビオトープ』。ビオでいいよ。」
 「ビオ」とは「ビオトープ」を短縮させた呼び方だということが分かった。
                   コピー 〜 mabinogi_2009_01_09_013
 チェリーク「私は魔族ではありません。ビオはスプライトではありますが、あなたの敵ではないのでご安心下さい。私達はあなたを襲うのではなく、あなたを『封印』から『目覚めさせる』ことが目的でした。」
 少年「俺を目覚めさせる?何を言ってるか分からないが、それより此処はどこなんだ?」
 チェリーク「・・・!此処がどこだか分からないということは、記憶が無いのですか・・・。」
 少年「それに、何故俺は魔族に『封印』されなければならないんだ?」
 チェリーク「・・・いつからかなのかは分かりませんが、あなたは此処、『ラビダンジョン』に『封印』されていました。それは魔族達が私の『役目』を阻止しようとしていたからです。」
 少年に首だけを向けていたチェリークは、体ごと少年に向き直った。
 まるで、これから話すことがとても重要なことだと言っているかのように。
 (ビオは拗ねているのか少年の周囲を回っている)
                   mabinogi_2008_12_31_003.jpg
 チェリーク「私の『役目』は二つ。それは、あなたを含めた『エリンを救うことが出来る力』を持つ『救世主達』を探し出し、行くべき道へと『導く』こと。
 もう一つは、力が完全に操れるようになるまで私が出来る限りの範囲で守ることです。」
 どこかの御伽話を聞かされているかのようだ。
 『エリンを救う』とか『救世主』とか、一体何のことなのか分からない。
 ビオ「困惑しているようだから教えるけど、少し前から魔族が人間達を襲撃するための準備を始めてしまっているの。このまま放っておけば、多くの人々が命を失うかもしれないわ。だから今のうちに、襲撃を企む魔族達を倒さなくてはならないの。」
 魔族にそのような動きがあったとは、知らなかった。
 チェリークの言っていることが事実だとしたら、自分が封印されている間に行われ始めたのかもしれない。
 ビオ「それで、その魔族達を倒す『使命』を受けている者こそが、『救世主』。
 『救世主』はあんたを含めて全部で4人。1人ではなく、『4人の力を合わせる』ことに意味があるのを忘れないでね。」
 チェリーク「私は魔族達にエリンの人々を襲わせたくはありません。そのためにも、残りの3人の方を探したいのです。そして、『救世主』の1人であるあなたの協力も必要なのです。」
 あまりにも現実味が無く、今でも信じられない話だ。
 しかしチェリークのその真剣な眼差しは、決して嘘をついてはいなかった。
 少年「そうか、俺の名前は『竜義(りゅうぎ)』。さっきはすまない。」
 竜義という名を持つ少年は、信じることにした。
 チェリークは魔族ではなく、仲間だということに・・・。
 チェリーク「竜義・・・さんですね。いえ、誤解を招くようなことをした私達がいけなかったので、どうかお気になさらず・・・。」
 チェリークに怒っている様子は全く無い。
 ビオ「許してあげてもいいけど・・・。」
 ビオはまだ根に持っているところがあるようだが、怒りは収まったようだ。
 チェリーク「では、竜義さん。どうか残りの方々を探すために、私達と一緒に来て下さいませんか?」
 チェリークはすがるような目で竜義を見ていた。
 竜義「一緒に行くのは良いが、一つ条件がある。」
 チェリーク「条件・・・ですか?」
 今の自分にはほとんど記憶が無い。
 ならば・・・
 竜義「俺もお前の手伝いをするが、お前も俺の記憶を取り戻すのを手伝ってくれ。」
 意外にもチェリークに驚いた様子はない。
 チェリーク「・・・分かりました。記憶が無いのは、落ち着かなくて当然ですよね。私も気になりますし、もちろん手伝わせて頂きます。」
 ビオ「チェリーク、手伝うことはいいんだけど、どうやって調べるの?」
 チェリーク「ティルコネイルに居る『あの人』に聞けば、何か分かるかなと思ったの。」
 「ティルコネイル」とは町か村の名前なのだろうか。はっきりは分からないが、聞いたことのある名前だ。
 ビオ「なるほどね〜。じゃあ、さっそく行ってみる?」
 チェリーク「うん。・・・あ、竜義さん。とりあえずティルコネイルに行くという方針でよろしいですか?」
 竜義「ああ、別に問題は無い。」
 チェリーク「では、行きましょうか。」
 竜義はチェリークとビオのあとをついて行くように、「ラビダンジョン」と呼ばれている部屋の出入り口を通った。
 チェリーク・ビオ「・・・!?」
 外に出ると、チェリークとビオは何かに驚いて止まっていた。
 ???「一足遅かったか・・・。」
 ???「みたいね。」
 そこには黒ずくめの男女2人が武器を持って立っていた。
                   mabinogi_2009_01_01_005.jpg
 怪しい2人からは、何か嫌な気配を感じる。
 明らかに、味方ではない・・・!
 チェリークも危険くらいは悟っていると思うが、言わずにはいられなかった。
 竜義「気をつけろ、チェリーク。やつらから、すごい『殺気』が出ている・・・。」
 それはまだ暗闇が続く、真夜中のことだった。

ープロローグ10ー

ーラビダンジョン(ロビー)ー
 まだ昼間が続くと思っていた矢先、気がつけばすでに辺りは暗くなり始めていた。
 ビオ「こんなに日が暮れるのが早いなんて・・・。」
 チェリーク「夜になる前に、ラビダンジョンに入ったほうがいいね。」
 チェリークとビオは、再びラビダンジョンへ向かった。
 ビオは姿を隠していなかったが、幸いにも近くに人は居ないようだった。
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 今夜は月の光が弱いらしく、いつも以上に視界は暗い。
 ビオ「このまま普通に入って大丈夫なのかな?」
 不安げなビオだったが、迷っている暇は無いようだ。
 チェリークが堂々とした足取りでラビダンジョンの入り口に入ろうとしていたからだ。
 ビオ「あ〜!!置いて行かないでよ〜。」
 中に入ると、そこは今までとまったく変わりの無いダンジョンのロビーだった。
 しかし先ほどとは違い、『封印の力』の気配をはっきりと感じることができた。
 ここが、魔族によって作られたラビダンジョンの『もう一つの空間』であることは間違いないようだ。
 ビオ「良かった。あの熊が言っていた事は正しかったみたいね。」
 チェリークは少し考えるような仕草をして、ロビーの中心にある祭壇の後ろの方へ歩いた。
 ラビダンジョンのロビーには、祭壇の後ろにちょっとした狭い空間がある。
 外は夜にもかかわらず、上からは光が差し込んでいた。
 この謎は未だに明かされていないが、さして気にするような者も居なかった。
 チェリーク「ここからが、一番力を感じる・・・・。」
 彼女には確信があるようだった。
 ビオ「じゃあ、ここでその紙を使ってアル様から教えて頂いた呪文を唱えれば、『封印解除』が出来るかな〜?」
 チェリーク「そうだと思う。」
 チェリークの表情はより真剣なものに変わった。
 ビオ「ついに、ここまで来たんだね・・・。」
 チェリークとビオは狭い空間から少し離れた。
 チェリーク「ビオ、『そのままの状態』でいいから、力を貸してね。」
 ビオ「うん!」
 しかしチェリークはすぐに『封印解除』には取り掛からなかった。
 チェリーク「・・・ダンジョン内で別の空間を容易に作り上げるなんて、褒めるつもりは無いけど、さすが魔族だなと思った。考えてみれば、本来のロビーで封印したとしたら必ず誰かが気づくはずだよね。ちょっと力がある人なら、尚更。」
 ビオは納得しているようで、何度も頷いていた。
 チェリーク「きっとここで『封印解除』に成功しても、他の『救世主達』を探すことを魔族が阻止しようとすることも何度かあると思う。それでも、私は諦めない。絶対に、なんとしてでも、全員集める。」
 ビオ「大丈夫だよ。いかなるときも、この我が傍にいるから・・・!」
 チェリーク「・・・ありがとう、ビオ・・・。」
 彼女を知らない者にはまったく分からないかもしれないが、確かにチェリークは微笑んでいた。
 チェリーク「始めるよ。」
 チェリークは右手に持っている、あの熊が落とした紙を上に掲げた。
 そして、アルから教えてもらった呪文を唱え始めた。
 それは人間の言葉ではなかった。
 精霊の言葉なのか、魔族の言葉なのかですら分からない。
 ただ、チェリークはまるで唄うかのように呪文を唱え続ける。
 ・・・すると、突如目の前が強い光に包まれた。
 目を開けていられないほどの光は次第に小さくなり、狭い空間の中心に、人の姿が見えた。
                   mabinogi_2008_12_27_009.jpg
 現れたのは、金髪碧眼の少年だった。歳は、チェリークと同じくらいであろうか。
 チェリーク「・・・・・・さん・・・・。」
 封印解除時に起こった轟音の影響で、チェリークが何と言っていたのかはほとんど聞き取れない。
 だが、明らかに誰かの名前を言っていた事は確かだ。
 チェリークとビオの視線の先に居る少年。
 彼こそが、エリンを救うことが出来る力を持つ者である『救世主』の一人・・・。
 過酷な戦いが、ここから始まった・・・・・・・・・・。
                                        〜プロローグ・完〜

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