ー謎の空間ー
そこは不思議な場所だった。
辺り一面が真っ暗な中に、光の紋章みたいなものが浮かんでいる光景だ。
紋章の端は、それぞれ『赤色』と『青色』に光っている。
自分がその紋章の中心に立っていることに、竜義は気づいた。
竜義「(何だこの場所は。俺は確か、ラビダンジョンの入り口付近で魔族と戦っていたはずだ。)」
そう、あの「アルファルク」という男と戦っている最中だったのだ。
その時たしかチェリークが危ないと分かって、助けに行こうとして・・・そこで記憶が途切れている。
もしかして、死んでしまったのであろうか・・・。
???「気がついたか、竜義。」
竜義「・・・誰だ!」
突然声が聞こえたものだから、竜義は驚いて顔を上げた。
すると目の前に、闇の中から人が現れるのが見えた。
いや、その人物を『人』と言って良いのか分からない。
現れたのは、光り輝く鎧を身に纏った騎士だった。その者(おそらく男性であろう)の背には、黒く大きな翼が生えている。
ただの騎士ではないことは誰にでも分かるだろう。
その姿にはどこか威厳があり、そして勇ましかった。
まるで、『光』を象徴するかのようだ。黒い翼があるのに・・・だ。
???「何だ、我の名前を忘れたか・・・。まあ良い、
我が名は『アーリアル』。かつて、お前と『運命を共にした』者だ。」
竜義「『アーリアル』・・・。不思議な響きだ・・・。」
何故だろう。この「アーリアル」と名乗る人物・・・敵だとは思えない。
懐かしい・・・と言う感じではないのだが。

竜義「ところでアーリアル、ここは一体どこなんだ?」
アーリアル「・・・ここは『生と死の狭間』・・・。
我の背後にある赤い光は、あの世・・・『ティルナノイへの出入り口』。
そしてお前の背後にある青い光が、『エリンへの出入り口』となっている。」
どうやら死に至ることはなかったようだ。
安心するべきなのだろうが、アーリアルの事が気になる。
『運命を共にした』の意味を尋ねようとしたとき、アーリアルの方が先に口を開いた。
アーリアル「先ほどの戦い、見させてもらった。」
アーリアルは小さくため息をついた。
確実に何かに呆れていることがはっきりと分かる。
アーリアル「・・・情けないな。それでもおまえは救世主か?」
圧倒的な強さを感じる声が、闇の遠くへ響く。
その声は決して、闇に溶けることはない。
アーリアル「竜義、その剣を見ろ。それを手に入れたとき、お前は何を誓った?」
竜義「言いたい放題言ってくれるな・・・。」
アーリアルを睨み上げ、すぐに目を逸らした。
竜義「記憶を失い、戦い方も分からないと言うのにどうやって勝てと言うんだ・・・。」
明らかに戦いに慣れている魔族が相手だったのだ。
同じ立場なら、誰でもそう言いたくなるに違いない。
アーリアル「そうか・・・。お前の心は、そんなに弱くなってしまったのか。
やはり、我らの期待はずれだったというのか・・・。」
威厳のあるアーリアルの声に、無念の色が混じる。
アーリアル「・・・それでも、もう運命の歯車は回りだしているのだ。
止めることなどできぬ。
しかし・・・だ。記憶は無くとも、お前の中には強力な『力』がある。
自信を持て、竜義。お前が勝てない相手など居ない。
おまえは一人ではないのだ。我も遠くから見守っている。
自分だけが苦痛だと感じるな。『真実』を知る者は、不安と恐怖に怯えながら自ら戦いを選んだのだぞ。
・・・信じるのだ、己の武器と仲間を。
仲間と互いに支え合い、共に苦痛を乗り越えることが出来たとき、
それぞれが『本来の力』に目覚めるであろう。・・・ん?」
アーリアルが話を終えたとき、彼の体は薄くなっているように見えた。
アーリアル「そろそろ、時間切れか・・・。我がここに居られる時間も、あとわずかだ。
さあ、どうする。『長き戦い』に疲れ、これ以上耐え切れないとでも言うのであれば、あの世への門をくぐるが良い。
それとも、恐怖に立ち向かって己の使命を果たすことを望むのなら、さっさと生の現実世界、エリンへ戻るのだ。お前の帰りを『待っている』者が居る。」
竜義「・・・・・・・・。」
自分の帰りを待っていてくれる人が居るとしたら、その人物は思い当たる限り一人しか居ない。
竜義「俺は自分の記憶を見つけられないまま、死ねない。」
きっとあの世への入り口を通ってしまったら、絶対に後悔する・・・。そう思った。
竜義「己の使命とやらを果たしに行ってやる。」
挑むかのように、目の前に居るアーリアルを見上げる。
迷いなど、既に無かった。
竜義「(それに、このまま死んだらあいつに怒鳴られそうな気がするしな。)」
アーリアル「・・・『救世主』。それは、『女神』と我等が勝手に決めた呼び名・・・。
おそらく魔族は、我らを馬鹿にして笑っているだろうな。
しかし我は信じている。必ずお前達が、エリンに平和の光を差し込むと・・・。
最後に教えてやろう。覚えていないだろうが、汝ははその剣に『いつか出会った仲間を守る。』と誓ったのだ。」
竜義「仲間を、守る・・・?」
仲間とは、チェリークやこれから出会うであろう他の救世主達か・・・?
そのとき、
竜義「・・・っ!」
突然激しい頭痛が竜義を襲った。これは、一体何を意味しているのだろうか。
理由は分からない。だが、心の中の自分が何かを拒み、悲鳴を上げているような気がした。
アーリアル「焦るな。どんなことがあろうとも、必ず『真実』を知るときが来る。
・・・楽しみだ。『真実を』知ったとき、お前はそれをどう受け止めるのだろうな・・・。」
だんだんとアーリアルの姿が薄く、透明になっていく。
アーリアル「己の心が分からなくなったときは、常に武器に問いかけろ。その剣は、お前の心を正直に受け止めてくれる。忘れるでないぞ。
それと、この姿は我のものではない。ここに長く居られないのもその影響だ。本当の姿の我に会いたいのであれば、『アル』を訪ねるが良い。ではまた会おう、竜義。」
そしてアーリアルは、跡形も無く消えた。
本当は色々なことを聞きたかったが、仕方が無い。
後ろを振り返ると、青い光が上に伸びている。
竜義はその先がエリンであることを信じ、青い光の元へ歩き、入り口に足を踏み入れた・・・。
チェリーク「あ・・・。竜義さん、意識が戻られて良かったです・・・・大丈夫ですか?」
目を開けると、チェリークとビオが竜義を見ていた。
空は暗く、無数の星が輝いている。真夜中なのだろう。
パチパチと何かが燃えている音が聞こえる。
顔を少し横に向けると、焚き火が暗闇の中を照らしていた。
近くに敵は居ないらしく、安心感が竜義の心を包んだ。
竜義「あ、あぁ大丈夫だ・・・。」
竜義は横になっていた体を起こした。手首を見ると、傷はすっかり消えていた。
脇腹にも、もう痛みは感じない。チェリークが全て治してくれたのだろうか。
竜義「それよりも、お前は大丈夫なのか?」
チェリークがエアウォークに斬られたときの傷は、治っているのか見当たらなかった。
しかし彼女は全体的に火傷を負っているままだった。
特に左腕が悲惨で、傷の深さを物語っている。
チェリーク「大丈夫です。それよりも、竜義さんがずっと唸っていらしたので心配でした。」
ビオ「ったく、数時間前まで本気で焦ってたんだからね〜!」
ようやく先ほどの出来事が夢であったことを理解した。
・・・夢だとは思えなかった。すべて、はっきりと覚えているからだ。
傍で燃え盛る炎を見つめながら、アーリアルと話したことをゆっくりと思い返す。
アーリアルに言われたこと一つ一つが、心に強く刻まれていた。
竜義「(仲間を守る・・・か。今回は守られてしまったが、次は大丈夫だろう・・・。)」
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------
こんにちは、お久しぶりです。
まずはお詫びを申し上げます。更新が遅れて本当にすみませんでしたorz×100
いざ書こうとした時に限って期末テストと重なってしまったものでして、本日ようやく4話を公開することが出来ました。
決して話に詰まったわけではないですので、そこはご理解をお願い致します><
今度は途切れすぎないように出来る限り努力します!(テスト期間中はご勘弁を;;)
では、また次の記事で^^